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Story09 「ロンドン-ヨーロッパの中のアジア的混沌」
再びロンドンにやってきた。今年に入って3度目である。ロンドンの友人がいつも、ストックホルムはとても寒いだろう、と言ってくるが、街中を歩くと、ストックホルム以上に寒いような気がする。気温は両方とも0度前後なので大差はないが、湿度などで、もしかすると体感温度は違ってくるのかもしれない。

しかし、日本人が多い。ストックホルムに住んでいると、アジア系の人と会うのも結構まれだったりするが、ロンドンではいたるところに日本人がいる。いちばんよく見るのが20歳前後の女子大生、そしてちょっとヒッピー系の20代前半の男といった感じだ。ロンドンの中心街であるオックスフォード・サーカスを歩いていると、20歳くらいの日本人の男が、道のど真ん中で看板になっていた。よく新宿の歌舞伎町などで見るのと同じやつである。まさかロンドンにまで来て、“人間看板”を見るとは思わなかったが、日本のこの“発明”は、ヨーロッパにも浸透しつつあるようだ。

“人間看板”があるからではないが、ロンドンは、ヨーロッパで最もアジア色の濃い都市ではないかと思うようになってきた。新宿、渋谷、あるいは香港、上海の混雑はよく指摘されるところだが、ロンドンははっきりいって渋谷のラッシュアワーと変わらないところがある。中心街のピカデリー・サーカスやオックスフォード・サーカスの人ごみを見ながらそう思った。東京の混雑はひどいとよく欧米人が言うが、ロンドンでも事情はそれほど変わらない。

人ごみ以外にも東京を彷彿させることがある。電車での居眠りだ。「何で日本人はいつもみんな電車で居眠りをしているのか」といわれることが多いが、よく観察すると、ロンドンでも1車両に平均2人程度は居眠りをしている人がいる。もちろんロンドンにいる日本人が居眠りしているわけではない。見た感じだと、おそらく地元の人たちである。

また、街が全体的にゴミゴミしているところもアジアっぽい。ストックホルムからロンドンにやってくると“ゴミゴミさ”がはっきりと浮き上がってくる。ロンドンの人たちは、基本的にごみ箱が目の前にあっても、その周りにゴミを投げ捨てるようだ。路上に空き缶や、食べかけのハンバーガーや、マクドナルドの袋などが散乱している。また、どこでも立ち小便するので、残飯と小便と、たまには大便のにおいが混ざり合って、まさに想像を絶する汚臭を醸し出していることもある。東京もストックホルムやヘルシンキよりは汚いが、ロンドンと比較すればはるかに清潔な街だと断言できる。

しかし、こういったアジアっぽさが、結果的に多くのアジア人、日本人をロンドンに惹きつける理由なのかもしれない。突然、ストックホルムやヘルシンキにいっても、なかなか社会に浸透していけないところがある。特にストックホルムやヘルシンキといった北欧の街は、あまりに整然としすぎていて、アジア人にはちょっと近づきがたい。北欧の街の美しさについては議論の余地がないが、逆にいうと、生活感がなく、博物館の中に住んでいるような感覚に近い。

ロンドン滞在3日目の夜、ウォーレンストリート駅前で友人を待っていた。あまりに寒いので、駅の裏側にあるバーに立ち寄ると、皆ビールを片手にアーセナルの試合に夢中になっていた。奇声をあげながら、ガブガブとビールを飲んでいた。アジア人はひとりもいなかったが、これもまた“雑然”としており、ふと東京を思い出したりした。

(2002/12/20)


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