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Story08 「スニーゲル・ウッタン・スニッカ」
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スウェーデン語をいつも勉強しようと思いながら、なかなかはじめられない。はじめての外国語なら、好奇心だけで始められるのだろうが、英語、フランス語と学習した後になると、言語習得の面倒くささが身にしみてわかっているので躊躇してしまうのである。何度も何度も、同じ表現を口にして、紙に書いて、テストを受けて、さらに日常生活でも無理をしてしゃべろうとする。このプロセスを思い出すだけでゾッとしてしまう。言語に特別な才能のある人であれば、その言葉の話されている国にさえ住んでいればすんなりと習得してしまうのであろうが、普通の人間には、相当の時間と努力を要する。
特に面倒なのは、しっかりと習得するためには、日常生活で片言の表現を駆使してでも、利用しなければならない点だ。初めてカナダに行った時のことを思い出す。喫茶店に行ってコーヒーを注文した時のこと。
“Can I have a coffee?”
というセンテンスをまず頭の中で作成する。ひと呼吸置いて、発声する。
通じない。こいつはいったい何をいわんとしているのかという顔つきでちょっと睨み付けられる。しょうがなくもう一度繰り返す。むっとした表情で何もいわず、コーヒーをもってくる。
明らかに、嫌がられていた。
もちろん、言葉のできない人間に対して皆が常にこういった態度で接するわけではないが、そういった傾向がカナダではあった。特に、喫茶店、レストランといったサービス業で働いている人々は低賃金でいやいやながら働いている人々が多いので、言葉が通じない客に対してフラストレーションがたまってしまうようである。
普通外国に住み始めると、こういったプロセスを通過していかなければ生活できないので、いやがおうでも言葉を覚えていくものだが、例外的な状況も存在する。たとえば、スウェーデン。どこにいっても英語が通じてしまうのである。“Can I have a coffee”といえば、即時に“sure”と返ってくる。これは隣国のデンマークやオランダなどでも同じである。英語だけでまったく不自由なく生活ができてしまうのである。同じヨーロッパでも、たとえば、スペインだと事情は異なる。スペインで生活を始めれば、1年後にはかなり流暢にスペイン語を話せるようになるだろう。
そんなわけで、スウェーデン語は片言の表現しか知らない。「タック=ありがとう」、「ウシェクタ=すみません」、「ヘイ=こんにちは」といった基本的な表現とあとは、「スニーゲル・ウッタン・スニッカ=ナメクジ」、「エクリ・オッパ=奇妙なサル」といったところである。外国語というのは不思議なものでなぜか最初は珍妙な表現しか覚えられない。
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東京にいたころに「デパガ」に会いたいと繰り返しているカナダ人がいたが、最初は単なる音の集合である外国語というのは、よほど印象が強い表現でない限り、記憶には残らないのかもしれない。初対面の人に会うと必ず、「スウェーデン語は勉強してるか」と聞かれるので、「とりあえず、“スニーゲル・ウッタン・スニッカ”と“エクリ・オッパ”は知っている」と答えることにしている。
(2002/12/04)
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