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Story12 「エストニアへの旅」
ストックホルムの街中を歩いていると、Tallinkと書かれたポスターをよく見る。Tallinkとはストックホルムとエストニアの首都、タリンとを結ぶクルージング・シップのことだが、近年、スウェーデン人の間では、エストニアへの旅行がブームとなっているようだ。

スウェーデンから見るとエストニアは、バルト海の向かい側に位置する。船で一夜過ごせば、翌朝には到着する。気軽に外国旅行ができるところが、スウェーデン人にとって魅力な点だろう。

また、スウェーデンから最も近い旧社会主義国家で、物価が安いというイメージも、近年のエストニア・ブームを支えている理由のひとつである。



というわけで、ちょっとエストニアの様子を見てこようと思った。Tallinkに行って旅行代金を聞くと、往復で360クローナ(約4500円)という。ヘルシンキ行きのバイキングラインも安かったが、これもなかなかな安さ。ただし、エストニアでの滞在時間は8時間である。火曜の夕方6時にストックホルムを出発し、船上で1泊、翌朝10時にエストニアに到着、同日午後6時にエストニアを出て、木曜の朝にストックホルムに着くというスケジュールだ。

Tallinkの第1印象は、「ちょっと古いな」というイメージ。ヘルシンキ行きのバイキングラインは、比較的きれいな印象だったが、Tallinkは全体的にちょっと色あせて見える。そんなことを考えながら、ふと友人の話を思い出した。実は数年前にストックホルム‐エストニア間を結ぶ船が沈没しているのである。800人以上の死者を出した大惨事だったとのこと。火曜日で人もまばらなので、なんとなくタイタニックを想像したりしてしまう。

船内を歩き回ったが平日で人も少ないので、デューティ・フリー・ショップで買ったワインを飲んですぐに寝た。



朝、目を覚ますともうエストニアの首都、タリンである。パスポートコントロールに行くと40歳くらいのエストニア人のおばさんがこちらを見てにっこりと微笑んだ。ヨーロッパに来ていつも思うことだが、パスポートコントロールの役人はフレンドリーな人が多い。アメリカやカナダではいつも警察の事情聴取を受けているという感じだが、こちらでは訪問を歓迎してくれる。

はじめてのエストニア。港から市街地までを歩きながら周りを見渡した。やはりストックホルムと比べるとはるかに閑散としている。しかし1キロほど先に教会の塔が見える。船上でもらったパンフレットによると、
どうやらこの塔が市街地の目印になっているようだ。




市街地は遠くに見えたが、約15分程度で着いた。うわさには聞いていたが、街が古い。まさに中世ヨーロッパのイメージだ。建物の色も、パステル調で水彩画を見ているよう。ストックホルムもオールドタウンあたりは、それなりの風情があるが、この街を歩いていると、一瞬、映画の中に入りこんだような気になる。




昼ご飯を食べようと思い、街をしばらく歩き回って、エストニア料理を探した。石畳の階段を5分くらい歩きつづけたところに、エストニア料理店らしきものがあった。店頭に掲げられているメニューを見ると値段は日本円で約800円といったところ。特に安くはないが、かなり歩き回ったのでそのレストランに入った。

外見も古いが、内装も古い。すべて石畳。天井は平面ではなく、丸みを帯びている。数百年前の建物であることは間違いない。しばらく建物の美しさにみとれてしまった。

適当にエストニア料理っぽいものをオーダーすると、パンと、魚のフライが出てきた。何の魚かはわからないが、とてもおいしい。船上のレストランでも魚料理が多かったが、エストニアではよく魚を食べるようだ。



昼食後、またしばらく街を歩きつづけた。ちょっと郊外も見てみようと思い、地図を片手に、北の方へ歩きつづけた。30分くらい歩くと、街並みがかなり変わってきた。もはや“中世的”ではない。5階建てくらいの汚いアパートがあちこちに立ち並んでいる。ルーマニアのブカレストでも見たが、旧社会主義国独特の、無味乾燥なコンクリートの建造物という印象だ。

ソビエト崩壊後、エストニアは再び独立し、2004年には欧州連合(EU)にも加盟する予定になっていると聞く。市街地の中心部の賑わいも、物価水準も、他のEU諸国に見劣りのしないレベルに達してきているが、郊外に出ると、いまだに旧社会主義国の遺物があちこちで見られた。

中世ヨーロッパの美しさと、旧社会主義の残骸の共存というのは、EU加盟の第1弾候補として挙がっているハンガリーやチェコなどと共通するところだろう。エストニアの首都、タリンでは、いたるところで建築工事がされていたが、過去のいやな思い出をEU加盟前に一掃しようということなのかもしれない。

(2003/03/13)



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