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Story10 「スウェーデン-ハイテクベンチャーのパーティー」
友人が勤めている会社のパーティーに行ってきた。ハイテク系の会社で、総勢30人くらいの会社である。Blue Moonというストックホルムで結構有名なナイトクラブでパーティーをやっているというので、午前1時に地下鉄でダウンタウンまで向かった。Blue Moonにつくと、ドアマンが招待状はあるかと聞いてきた。こういうクラブのドアマンはどの国でも共通だが、結構いやなやつが大勢いて、気に入られなかったりすると、クラブに入れなかったりする。以前、モントリオールに住んでいたとき、アメリカ人の集団といっしょに並んでいたら、後から並んだにもかかわらず、先に中に入れてもらったことがある。ナイトクラブというのは、世界共通で、ドアマンが気に入ったやつから順番に入れるようになっている。そのモントリオールのドアマンは、単にアメリカ人が嫌いなので、私を先に通したようだった。そんなことを思い出しながら、こいつに嫌われたら、もしかしたら入れないかもしれないなどと思いながら、携帯でクラブの中にいる友人に電話をした。運良く、友人がすぐに表に出てきて、「彼は会社の一員だから」といったようなことをもごもごとスウェーデン語でドアマンに話したら、すぐに中に通してもらえた。

招待状がいるなどといわれたので、何か特別なパーティーかと思って中に入ると、大した事はない。日本流にいうと単にサラリーマンのおっちゃんとその友人のパーティーといった感じだった。日本円で1200円くらい入場料としてはらい、コートチェックでまた300円くらい取られた。招待状がいるようなパーティーなのに、入場料やコートチェックがとられるとは、と友人にぐちをこぼしていると、ジントニックをおごってもらった。

まわりを見まわすと、六本木のクラブと大して変わらなく見える。でもなんかおっちゃんが多いなあと思っていると、友人が、あの向かい側にいる女の子を紹介してあげようといってきた。金髪の女の子で、一瞬スウェーデン人かと思ったが、すぐにアクセントでアメリカ人だとわかった。スウェーデンには4年住んでいるという。もともとは交換留学生としてスウェーデンにやってきたが、スウェーデン人の彼氏ができて、いまもまだ住んでいるということだった。友人が耳元で、「彼女はこの会社のCEOとつきあってるんだ」とささやいてきた。横を振り向くと、40歳くらいのCEOが隣にいた。はっきりいってよくある不釣合いなカップルだった。CEOの方はおせじにもいい男とはいえない。そのアメリカ人女性も、20代前半で、ちょっと下半身が太りぎみで、いかにもアメリカ人のステレオタイプにすっぽりとはまってしまいそうな感じだった。

この二人と、Small Talk(世間話)を始める。なんでスウェーデンにやってきたのか、どれくらい住んでいるのかといった、よくある話を始め、あたりさわりのない受け答えをしていた。一応、過去2年間日本に住んでいたものとして、日本人らしく、“礼儀正しく”、ハイテクベンチャーのCEOとその彼女と話をしているつもりだった。すると、突然横から、「こいつはそうたいした奴じゃないから」と20代半ばの友人が、若干酔っ払いながら、つっこんできた。しかし、これは私に向かっていっているのではない。彼が勤める会社のCEOへの発言である。

私自身は、海外の企業でまともに働いた経験がないので、これが日常的な会話かどうか判断はしがたいが、彼らの人間関係は、明らかに「日本的な常識」を逸している。スウェーデンのベンチャー企業とはこんなものなのかと思っていると、今度はもう一人の酔っ払った友人が “上司”にけちをつける。「Look at this guy! He is a mess! Dirty, nasty guy!」と叫ぶ声が聞こえる。あまりいい翻訳はしがたいが、まあ普通に訳すとこんな感じである。「こいつをみてみろよ。なんてざまだ、まったく汚い奴だ!」

その上司は、ニヤニヤと笑っている。なにやら日本的な常識とはずいぶん違う。友人にそのことを話すと、スウェーデンではこれが普通だという。平社員であろうと、上司であろうと、まったく対等な言葉で、話すことができるらしい。30人くらいのハイテクベンチャーだが、皆が友達同士といった印象だった。

午前、2時くらいに、そろそろホテルに戻ろうとCEOが言い始めた。皆近所にアパートを持っているが、今日は会社のパーティーで、近くの高級ホテルに予約をとっているという。友人につれられて私もそのホテルに向かった。

スウェーデンでもっとも歴史の古いホテルだという。話によると、数年前、ロシアのエリツィン大統領が、数週間そのホテルを借り切ったということだ。中に入ると内装は確かに古い。天井は、数十メートルはある。壁と天井はぎっしりと絵画で装飾されている。テーブルにはサンドイッチとビールが並んでいた。みなテーブルにつくと、みな雑談をしながら、食べ始める。サンドイッチといっても、エビと卵がパンの上に山盛りになっており、パンとパンに挟まれている日本のサンドイッチとは違う。

しばらく飲み食いしていると、突然、隣にいた男が立ちあがって、珍妙な芸を始める。スウェーデン語なのでまったく理解できなかったが、隣に座っていたCEOの彼女のアメリカ人が説明してくれた。「面白くないから、わからない方がいいよ」

身振り手振りから判断すると、何らかのセックスがらみの芸らしい。これは伝統的な日本企業の得意分野かと思っていたが、フェミニズムが世界で1番進んでいるスウェーデン企業も同じようなことをやっているのかと、ちょっと感心してしまった。でも、よく考えると男女平等の社会では、セックスがらみのジョークを会社のパーティーでやっても、異論を唱えるものはいないのかもしれない。
この真夜中に、高級ホテルで、友人の会社のパーティーで飲み食いするというのは、ある種不思議な経験だったが、スウェーデンのハイテクベンチャー企業の人間関係を垣間見ることができ、面白かった。3時くらいに皆、ホテルの部屋に戻っていったが、私と友人の何人かは、またストックホルムの市街に飲みに出かけていった。


(2002/12/21)


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